縫って縫って。叩いて叩いて叩きまくる。
今回採用した製法はハンドソーンノーウェルト+ラストネイルコンストラクションという横文字並べたら凄そうに見えそうな独自製法。
Pというモデルは靴の分類でいうとミュール。中東の王族や商社OLさんは大体3足以上所有しているあの気高き突っ掛けです。素足で履くことを想定して (勿論靴下でも快適に)足裏や甲部に縫い目が接触しないように構造と意匠に気を配りました。以前の記事でも書きましたが着想は実家の小便器で着手のキッカケはハリソン山中のあの名台詞から。
最もプリミティヴなやり方でいかせていただいてます。
巷でよく言い争われている、手製至上主義もしくは機械仕立信仰。正直な話どっちでも良いし実情を知らない売り手の常套句になっているのは一職人として気持ち良くないなとおもう。最終的には両方とも人間の目と手が加わらないと物作りは成立しないわけで。作り方に優劣も無いし、手と機械を適材適所で使い分けるのが履く人にとっても素材にとっても誠実だと私達は考えています。と、ちょっと熱くなっちゃいました。脱線してすみません。
そういうこともありこのモデルを作るのは外見にも中身にとってもより原始的な手法で一貫するのが良いと判断し工業ミシンを一切使わず総手縫いで、アッパー(表革)の縫い合わせは松脂を摺り込ませた極太苧麻糸をチェーンステッチで一目一目しっかり縫っています。万が一、縫い目が一目飛んでも解けてこないのが鎖縫いの良さ。松脂は天然の接着剤。ライニング(裏革)がアッパーの履き口を飲み込むようなパターンでハンドステッチが足の甲に当たらないように表革と裏革の間に納めて。同色にするか色差を出すか、表と裏の革の組み合わせの色選びが履く人それぞれの楽しい個性になると嬉しい。また足裏が直接触れる革中底に縫い目が出る縦縫いのマッケイではなく、縫い目が足に干渉しない横縫いのハンドソーンを用いて、革本底を塩水で錆びさせた釘で纏めています。松の木から分泌される脂を摺り込んだ苧麻糸、鉄と酸素や水分が結びついて顕れる錆を纏ったことでよく効く釘も数百年前から培われた先人の知恵で大地の恩恵。履いた時に人間の足の輪郭に馴染むようにアッパーとアウトソールの継ぎ目を無くしたかったのでレザーウェルトを省きました。そして流線形を描かせるために水分を含ませたバッファローべンズソールとヒールを角や隙間がなくなるまでハンマーで千回超どつき回して成形。根気とやる気は竜崇の最大の持ち味。オールソールリペアも靴に負担をかけず可能ですからご安心を。そしてどうかご興味お有りの方はフィジカルでプリミティヴでフェティッシュな製法で仕立てたこの新型Pをご覧に是非お越しくださいませ。Pに、プリミティヴのPに清き一票をどうぞよろしくお願いします。ちなみに木型はTOMO OXFORDと同じです。コレクションページにも情報アップしてますのでお時間ございましたらぜひご覧くださいませ。
なにとぞ。
竜崇